◆Taiwan Longitudinal Health Insurance Database 2000を用いた後ろ向きコホート研究
著者らは台湾の大規模調査のデータを解析して、虫垂切除手術後3年間のうちに2型糖尿病を発症するリスクを、虫垂切除していない集団と比較しました。
◆虫垂切除手術後の2型糖尿病発症リスクは未手術に比べて1.45倍
以下の結果が得られました。
この研究では計31,512人の患者を対象にし、5,252人は虫垂切除(研究コホート)を行い26,260人が対照としてマッチされた。3年間の追跡調査期間内に714人(2.3%)が2型糖尿病を発症し、内訳は研究コホートの161人(3.1%)と対照コホートの553人(2.1%)であった。この研究コホートでの2型糖尿病発症に関し補正したハザード比(HR)は、1.45(95%信頼区間は1.22から1.74)であった。この増加リスクは男性(補正HRは1.47、95%信頼区間1.16から1.88)と 穿孔性虫垂炎患者(補正HRは2.28、95%信頼区間1.71から3.03)で顕著だった。また65歳未満の若い患者のみに適応出来た。
つまり虫垂切除をおこなった5,252人での2型糖尿病発症リスクは、虫垂切除をしていない集団と比べて高く、65歳未満の男性、穿孔性虫垂炎患者の場合は特に大きい増加が見られました。
著者らは、「虫垂切除後3年間での2型糖尿病発症リスクの増加が65歳未満で見られた。このリスクは男性で複雑性虫垂炎を発症した患者で高くなった」と結論づけています。
最近虫垂切除が腸内細菌の分布を変えるとの報告もあります。今回の結果も、虫垂切除手術によって免疫システムの変化が生じた事で、2型糖尿病が発症しやすくなった可能性が考えられます。ただし男女、年齢に差がある結果を考慮すると、虫垂炎が起こりやすい人の背景に、糖尿病にもつながる要因があった可能性も否定できず、より詳細な研究が待たれます。
執筆者
Risk of new-onset type II diabetes after appendicectomy.
Br J Surg. 2015 Jun 29.
[PMID: 26122401] http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/bjs.9875/abstract※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。