2015.07.21 | ニュース

脳卒中後の歩行訓練には機能的電気刺激が有効

384人を対象に歩行訓練を実施

from Neurorehabilitation and neural repair

脳卒中後の歩行訓練には機能的電気刺激が有効の写真

脳卒中の後遺症の1つに、下垂足という足首を思うように曲げられなくなる症状があります。治療法として短下肢装具(AFO)のほか、機能的電気刺激(FES)が試されています。以前の研究で、6ヶ月間AFOとFESそれぞれの装置を使用したときの歩行運動への有効性が確認されていましたが、その後さらに6ヶ月間追跡研究を続けたところ、計12ヶ月の治療でもFESにAFOと同程度の有効性が見られました。

◆FESとは?

コンピューターを使って人工的に神経の働きをさせる装置です。小型で携帯が可能なため、日常生活の中でも使うことが出来ます。歩行に必要な筋肉一つ一つに電極をつけ、コンピューターによって電気刺激を制御することで、多数の筋肉を同時に動かすことで、歩行を促します。現在、リハビリテーションの有効な手段になるのではないかと期待されています。

 

◆384人の被験者の歩行運動を12ヶ月間観察

前回までの調査において研究チームは、無作為に選ばれた495人の被験者を対象に調査を行いました。そこでは、6ヶ月間それぞれの装置を使用したときに、FESはAFOと同程度の歩行運動への有効性があるという結果が得られています。

そこで研究チームは、前回までの調査の被験者のうち384人に対して、引き続き6ヶ月に渡ってAFOとFESによる歩行運動に対する有効性の比較を30カ所のリハビリテーション施設で調査しました。被験者には、AFOとFESのうち最初の6ヶ月に使った方を、装着し続けてもらいました。

それぞれの装置をつけた被験者に一定距離を歩かせたときの歩行運動の様子を評価しました。

 

◆AFOとFESによって歩行運動が改善された

FESによる歩行運動に対する効果は、AFOによる効果に比べて、10m歩行試験の成績と深刻な有害事象の頻度で劣らない結果が得られました。また、どちらの治療でも、初期の測定と比較して10mの歩行試験の成績は改善していました。

研究チームは、「長期間のFESの使用は、歩行耐久性や機能的な歩行運動のさらなる改善につなががる可能性がある」と述べています。

 

AFOだけでなく、長期的なFESの使用によっても脳卒中による下垂足の治療効果が得られたという結果が示されました。下垂足以外の運動症状にも効果があるか、技術の改良によりさらに高い効果を上げられるかといった点にも興味が湧いてくる研究です。

執筆者

鈴木あいか

参考文献

Long-Term Follow-up to a Randomized Controlled Trial Comparing Peroneal Nerve Functional Electrical Stimulation to an Ankle Foot Orthosis for Patients With Chronic Stroke.

Neurorehabil. Neural. Repair., 2015 Feb 4

[PMID: 25653225]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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