2015.07.14 | ニュース

多発性硬化症に対して、ステロイドは内服でも点滴と同程度の効果があった

フランス199人のランダム化試験

from Lancet (London, England)

多発性硬化症に対して、ステロイドは内服でも点滴と同程度の効果があったの写真

多発性硬化症は治療の難しい病気で、脳や脊髄の神経がダメージを受けることでさまざまな症状を起こします。原因には免疫の異常により自分自身の体が攻撃されてしまうこと(自己免疫)が関わっているとされ、大量のステロイド薬で過剰な免疫を抑える治療がなされます。このとき普通は点滴が使われますが、フランスの研究班が同じ有効成分の飲み薬を試したところ、同程度の効果が得られました。

◆フランス18歳から55歳の多発性硬化症患者をランダム化

研究班はフランスの13の施設で、再発を繰り返す多発性硬化症のある18歳から55歳の患者199人を対象に、1日1,000mgを3日間のメチルプレドニゾロンの治療を行いました。

対象者はメチルプレドニゾロンのカプセル剤を飲むか、点滴を受けるかでランダムに振り分けられました。

 

◆効果は同程度

治療から次の結果が得られました。

100人の患者が経口メチルプレドニゾロン群に、99人の患者が静脈内メチルプレドニゾロン群にランダム割り付けされ、再発から治療までの平均期間は経口群で7.0日(標準偏差3.6)、静脈注射群で7.4日(標準偏差3.9)だった。per-protocolの集計で、経口群の82人中66人(81%)と、静脈注射群の90人中72人(80%)が一次エンドポイントを達成した(治療による絶対差分0.5%、90%信頼区間-9.5から10.4)。有害事象の率は類似していたが、不眠は経口群のほうが静脈注射群(63人、64%)よりも多かった(77人、77%)。

メチルプレドニゾロンをカプセル剤で飲んだグループと、点滴を受けたグループで、あらかじめ決めた基準を満たす改善が得られた割合には違いが見られませんでした

研究班は、「3日間の高用量メチルプレドニゾロンの経口投与は、治療後1か月での機能障害スコアの改善において静脈注射に対して劣らず、類似した安全性プロファイルを示した」と結論しています。

 

飲み薬が使えれば、入院して点滴治療を受ける代わりに、自宅などで活動していても治療ができるかもしれません。多発性硬化症は長期間の治療が必要になる場合が多く、治療には症状を抑えるだけでなく、なるべく幅広い生活を可能にすることが望まれます。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Oral versus intravenous high-dose methylprednisolone for treatment of relapses in patients with multiple sclerosis (COPOUSEP): a randomised, controlled, double-blind, non-inferiority trial.

Lancet. 2015 Jun 26 [Epub ahead of print]

 

[PMID: 26135706]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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