◆化学療法中に6か月ごとの注射をランダム化
研究班は、閉経後の乳がん患者で、化学療法を受けている人を対象としました。対象者はデノスマブの注射を6か月ごとに受けるグループと、偽薬の注射を受けるグループにランダムに振り分けられました。
◆骨折減、副作用全体の頻度に差なし
試験から次の結果が得られました。
偽薬群と比べて、デノスマブ群の患者は最初に臨床的骨折が起こるまでの時間が有意に延長(ハザード比0.50、95%信頼区間0.39–0.65、p<0.0001)していた。全体の骨折数がデノスマブ群(92件)で偽薬群(176件)よりも少ない傾向はすべての患者サブグループで[...]差がなかった。
安全性解析セット(1回以上試験薬を投与されたすべての患者を対象とする)で、有害事象の発生率はデノスマブ群(1,366件、80%)と偽薬群(1,334件、79%)で差がなく、深刻な有害事象に絞っても差がなかった(521 vs 511、両群とも30%)。
93人の患者(完全解析セットの3%)が研究期間内に死亡し、デノスマブ群の1人の死亡は試験薬に関連すると考えられた。
試験期間中の骨折はデノスマブのグループで92件、偽薬群では176件と、デノスマブのグループで少なくなっていました。
副作用について、デノスマブまたは同時に使われている抗がん剤の副作用とがんの症状などすべての原因を含む、有害な出来事(関節痛など)の頻度はどちらのグループでも同程度で、比較的深刻な例に絞って比較しても同様でした。2つのグループを合わせて93人が試験期間中に死亡し、そのうち1人はデノスマブが原因の可能性があると考えられました。
この結果を、研究班は「年に2回60mgずつのデノスマブによる補助療法は臨床的骨折のリスクを低下させ、有害性を増すことなく使用できる」とまとめています。
高齢者の骨折は寝たきりの原因になることが多く、死亡を近づけるとも言われ、デノスマブが80人近くの骨折を防げていたとすれば、その価値は重要です。ただし、それと同時に1人でも関連する死亡を増やしていたとすれば、良い面と悪い面を慎重に考え合わせる必要があるでしょう。
執筆者
Adjuvant denosumab in breast cancer (ABCSG-18): a multicentre, randomised, double-blind, placebo-controlled trial.
Lancet. 2015 May 31 [Epub ahead of print]
[PMID: 26040499] http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(15)60995-3/abstract※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。