2015.06.02 | コラム

手術室ナースは足が器用!?

元手術室ナースによる手術の裏話

手術室ナースは足が器用!?の写真

手術室で働くナースは、足がとても器用だと筆者は常々思っています。 なぜ手術室で働くと足が器用になるのでしょうか? 手術と足、その関係性を手術室の特徴を踏まえて解説します。

◆清潔が命

手術室で働くスタッフにとって、非常に重要なポイントがあります。

それは「清潔/不潔」の区別です。

これはどういう事かと言うと、術後の感染症を予防するために、感染が起こらない環境を作る必要があるため、清潔なもの・部位・状態と、不潔なもの・部位・状態を適切に分ける必要があるという事です。

手術する場所をより無菌に近い状態にキープするために、使用する器械や、手術をする医師らが着るガウン・手袋、手術部位の周りを覆う布など、手術部位に接触する可能性があるものは全て滅菌したものを使用します。これを”清潔”な状態とします。

逆に、それ以外のもの・部位・状態を全て”不潔”とみなします。

つまり、手術している場所は清潔でも、床、つまり足元は不潔なので清潔な手を伸ばす事はできないのです。

 

◆足で出来る事

手術介助中に自分の手元が清潔な状態において、例えば何かが床に落ちた時、自らそれを拾う事はできません。すぐに拾ってくれる人が居ない時は足で安全な所に移動させます。

また、床に置いてあるゴミバケツをもう少し近くに寄せたいと思った時、足で蹴って近くに寄せます。むしろそのためにバケツの底に車輪が付いており、簡単に足でバケツの移動ができるように工夫されています。これを「キックバケツ」と言いい、足で場所移動させる事が前提なのです。

そのほかにも、手術台と自分の身長を合わせるために乗る「足台」を適当な場所に移動させるのも足。

手術用器械を乗せた台などを動かす時に邪魔となる、床に這った何かしらの電源コード等を踏まないように避けるのも足。

手術用の医療機器は足で出力ボタンを押すフットスイッチ式のものが多くありますが、このフットスイッチを使いやすいように医師の足元に寄せるのも足。

疲れた自分の足を軽く叩くのも足。

足が痒くなったら掻くのも足。

このように、足は大活躍するのです。

 

◆手術室に入る方へ、手術室ナースからのお願い

患者さんの術後感染の防止を目的として、手術室ナースは足を最大限に活用し、手術介助を行います。この状況は、はたから見たら非常に行儀悪いものに映るかもしれません。

もし手術室に入る機会があり、足で何かしている看護師を見ても、「足癖が悪い、行儀が悪い」と思わずに、「足が器用だな」と暖かく見守ってくださいね。

執筆者

名原 史織

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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