2015.05.23 | コラム

医学部ってどんなところ??

知られざる医師キャリアの実態〔その1〕

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どの業界でも、内部の事情は、外から見えにくいものです。このシリーズでは医学部に入学した段階から、研修医を経て、専門医に至るまでの医師のキャリアステップについてご紹介したいと思います。本記事ではまず、医学部の実情についてご説明します。

医学部のカリキュラム

医学部に入ると、卒業までは6年間かかります。これは、研究をやるために改めて通う大学院とは別で、大学そのものの在籍期間が6年間ということです。2015年現在、6年制の学部は他に、歯学部、薬学部、獣医学部があります。

6年間のカリキュラムは、このような具合です。

  • 1-2年生:教養 (語学、数学、物理、etc.)
  • 2-3年生:基礎医学 (解剖学、生化学、薬理学、etc.)
  • 3-4年生:臨床医学 (内科、外科、etc.)
  • 5-6年生:病院実習

医学が日々進歩しているために、医学部で教えるべき範囲は年々拡大しています。多くの大学では基礎医学の勉強が前倒しになり、その分、教養分野の学習にかけられる期間が圧迫されているのが現状です。

ある意味では高校の延長線上にあるような、語学や数学、物理などの勉強を終えると、医学生の最初の試練となるのが、解剖学実習です。実際に亡くなられた方のご献体で学ばせて頂くこの実習は、「自分は医師になるのだな」と、各自が深く実感させられる瞬間でもあります。私が学生のころ、解剖学実習の初日、あまりの緊張で卒倒してしまった同級生がいました。

 

机上の勉強から病院実習に移る前に

様々な分野の勉強を経て、4年生から5年生に上がる前に、全国統一の学力テスト(CBT)と診察実技テスト(OSCE) があります。これを境に、筆記の勉強から、病院での実習に移りますので、いわば、路上教習に出る前の「仮免許試験」のようなものです。医療の現場に参加するのに、ふさわしい実力があるかどうかが試される場です。

診察実技テスト(OSCE)では、患者役の役者さんにご協力頂き、医師として話を聞くところから、診断を考えながら適切な診察をするところまでのふるまいが評価されます。当然、正しい診察をすることだけでなく、その際の言葉遣いや、患者さんへの気配りまでも含めて評価の対象となります。これらの試験結果によっては、進級できずに留年となる場合があります。

その後の病院実習では、実際に白衣を着て、聴診器を持ち、患者さんの担当を割り当てられます。研修医やその上の医師と一緒に、チームとなって患者さんの診療に当たります。この期間がおよそ2年間です。病院で実習する医学生を、正式に「スチューデントドクター」と位置付けて呼んでいる病院もあります。

 

卒業前の大一番

6年生の最後、卒業直前の2月には医師国家試験があります。出題範囲が膨大なため、早いところでは5年生のうちから、病院実習と並行して試験対策を始める大学や、3-4年生の時の講義そのものが国家試験対策を意識した内容になっている場合もあるようです。国家試験の受験対策塾から有名講師を大学に招待して、講義をしてもらうところもあります。大学としても、学生の国家試験合格率が、翌年に入学志願する高校生の数に直結するという事情があるという点は否めません。

そして国家試験の前にはまた別に卒業試験がありますので、国家試験に受かりそうでないと思われる学生は、卒業試験で落とされて、国家試験までたどり着くことすらできません。

ここで無事、卒業試験と国家試験に合格すると、医師免許が与えられ、晴れて4月から医師(研修医)として働くことができるのです。

 

シリーズ「知られざる医師キャリアの実態」の一覧はこちら

執筆者

沖山 翔

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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