2015.05.08 | ニュース

血圧から認知症の発症を予測できる...?

米国研究チームが「脈圧」に着目し、877人を調査

from JAMA neurology

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アルツハイマー病は、新しく物事を覚えられなくなってしまうなどの症状が現れる病気です。 現在、日本の認知症の約半分がアルツハイマー病だと言われており、根治する薬はないため、いかにして予防できるかに関心が持たれています。今回、米国研究チームは血圧測定をすることでわかる、「脈圧」が大きいことと、アルツハイマー病の原因である脳内タンパクの沈着に関係があることを報告しました。

◆脈圧とは?

脈圧とは収縮期血圧(通称上の血圧)から拡張期血圧(通称下の血圧)を引いた値のことです。例えば血圧が120/80mmHgの人の脈圧は40mmHgになります。血管の弾力性が落ちてくると脈圧は高くなると言われ、高齢になるほどこの値が大きくなると言われています。

 

◆認知症がない877人を調査

55-91歳の認知症のない877人を半年から8年にわたって調査を行い、アルツハイマー病の発症に関連があるとされる脳脊髄液中のタンパク(リン酸化タウ蛋白とβアミロイド1-42)を測定し、これらが増えている(陽性)か正常範囲(陰性)かと脈圧との関係を分析しました。

 

◆脈圧と認知症発症に関係がある

研究の結果、リン酸化タウ蛋白が陽性の人の脈圧は平均62.0mmHgで、陰性人の平均57.4mmHgに比べて大きい値を示しました。
80歳以上の高齢者において、リン酸化タウ蛋白及びβアミロイド1-42の両方が陽性だった人は、どちらか一方だけが陽性だった人と比較すると、脈圧が統計的に有意に大きい結果となりました。
また脈圧の値が63mmHgを超えると、リン酸化タウ蛋白とβアミロイド1-42の両方の数値が陽性の人が10%増加していました。
この増加率は80歳以上の高齢者の方が55歳-75歳までの高齢者に比べ著しく高いという結果を示しました。
80歳以上の高齢者において脈圧が大きかった人ほど、認知症が発症しやすい傾向にありました。

研究チームは「脈圧は年齢に関わらず、認知症を発症する前の神経変性と関係していた。中でも、高齢な人は脈圧の高さと認知症の発症が関連している。」と述べています。

 

認知症の発症及び進行と脈圧の高さには因果関係は不明ですが、関係があるようです。
今回の研究結果を皆さんはどう解釈されますか?

執筆者

佐々木 康治

参考文献

Pulse Pressure in Relation to Tau-Mediated Neurodegeneration, Cerebral Amyloidosis, and Progression to Dementia in Very Old Adults.

JAMA Neurol. 2015 Mar 30

[PMID: 25822631]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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