◆平均55歳のイギリス人、約200万人を対象に追跡調査
肥満と認知症は、身近に蔓延する非常に深刻な健康問題です。
これまで過去の研究では、中年期の肥満体型は、老齢期において認知症の発症リスクを増やす要因であると指摘されてきました。
しかし、今回ロンドン大学などの研究チームが、大規模な医療記録データベース(CPRD)を元に平均55歳のイギリス人約200万人を対象とした統計的調査を行ったところ、これまでの通説を覆すような結果が明らかとなりました。
◆肥満体型よりも痩せ型の方が認知症を発症しやすい
調査の結果、1,958,191人中45,507人(年間1000人あたり2.4例)が認知症を発症し、健康的な体重の人々に比べ、BMIが20未満の、いわゆる痩せ型の人々の認知症リスクは34%高かったというデータが報告されました。また、BMIが40以上のいわゆる"超肥満体"と言われる人々の認知症発症リスクは、健康的な体重の人々に比べて29%低いという結果でした。
これらの分析をふまえ、研究チームは以下のように解釈しています。
- 中年期以降に低体重である場合、認知症の発症リスクは増加する
- この調査結果は「中年期の肥満が、認知症のリスクを高める可能性がある」という今までの通説に反するものである
以上の報告は、体重と認知症との関係を完全に解明するものではありませんが、少なからずこれまで報告されてきた肥満と認知症リスクの関連性に対し、新たな研究の可能性を示していると言えます。
執筆者
BMI and risk of dementia in two million people over two decades: a retrospective cohort study.
The Lancet Diabetes & Endocrinology. 2015 April 09 (Published Online)
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。