◆9週間にわたりネット上の治療を行う
今回の研究は、ドイツのハンブルグにある外来クリニックに通う、18〜65歳の多発性硬化症患者90人を対象にしたものです。
対象患者をランダムに治療介入する群としない群に振り分け、それぞれを介入前後で比較し、治療効果を統計解析によって示しました。介入は9週間にわたって行われました。
◆オンライン治療でうつ症状が緩和する
すべての介入を終えたのは71症例で、内訳は治療介入した症例は35人、していない群が36人でした。うつ病の症状を総合的にあらわす心理検査であるBDI(ベックうつ評価尺度)の値が、治療介入群では低下し、未介入群では上昇していました。
これらのデータを統計解析した結果、介入群は未介入群に比較して良好な作用を及ぼしていることが判明しました。うつ症状の悪化(BDI >13)がみられる症例は、未介入群で45例中3例(7%)だったのに対し、介入群は0人でした。
研究グループは、身体上の問題で定期的に通院することが難しい多発性硬化症の患者に対し、ネット上の治療プログラムとして最適なものとなる可能性があると考察しています。
今回の研究結果からネット上の治療によってうつ症状を緩和できる可能性が高まりました。どのように既存の治療と組み合わせて行えば良いかについては未だ分かっていないため、追加研究を待ちたいところです。
通院する必要がなく、簡便に行うことができるため、うつ症状に対する治療方法の選択肢の1つとなるかもしれません。
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執筆者
An online programme to reduce depression in patients with multiple sclerosis: a randomised controlled trial.
Lancet Psychiatry. 2015 Mar.
[PMID: 26359900 ]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。