15歳未満で1型糖尿病と診断されてからの経過
ノルウェーの研究班が、子供のころに1型糖尿病が発症した人の長期的な経過を、最大42年間追跡したデータをもとに推計し、専門誌『Diabetes Care』に報告しました。
研究班は、ノルウェー全国にわたる追跡調査のデータを解析しました。1973年から1982年の間と1989年から2012年の間に15歳未満ではじめて1型糖尿病と診断された人を対象としました。
データから末期腎不全の発症率を計算しました。
血糖値が高い状態が長年続くと、全身のさまざまな臓器に合併症が現れる恐れがあります。糖尿病腎症は代表的な合併症のひとつです。腎臓のダメージが進んで末期腎不全の状態になると、透析などの治療が必要になります。
40年で5.3%
データの解析から次の結果が得られました。
7,871人の患者の間で、フォローアップ期間は147,714人年に相当し、末期腎不全は103人(1.3%)で発症した。糖尿病の診断から末期腎不全の発症までの平均期間は25.9年(範囲12.7-39.1年)だった。末期腎不全の累積発症率は糖尿病罹病期間20年で0.7%(95%信頼区間0.4-1.0)、30年で2.9%(2.3-3.7)、40年で5.3%(4.3-6.5)だった。
対象者7,871人のうち、追跡期間に末期腎不全となった人は103人でした。1型糖尿病と診断されてからの期間ごとでは、20年で0.7%、30年で2.9%、40年で5.3%の人が末期腎不全になると推計されました。
末期腎不全の発症率について、1973年から1982年までに1型糖尿病を診断された人と、1989年から2012年までに診断された人で統計的な差は見つかりませんでした。
子供が糖尿病と言われても大丈夫?
15歳未満で1型糖尿病と診断されてから末期腎不全に至る人は長期的にも少ないとする報告を紹介しました。
この推計値には、血糖値を下げる治療などの効果が反映されていると思われます。
末期腎不全以外にも注意するべき糖尿病の合併症はありますが、生活習慣と関係なく子供に1型糖尿病が発症した場合でも、合併症を防ぐための治療があります。治療や将来予想されることについて主治医とよく話し合い、前向きに治療に取り組むことが大切です。
執筆者
Low Incidence of End-Stage Renal Disease in Childhood-Onset Type 1 Diabetes Followed for Up to 42 Years.
Diabetes Care. 2017 Oct 12. [Epub ahead of print]
[PMID: 29025877 ]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。