2017.10.23 | ニュース

2015/16年に子供のインフルエンザワクチンは効いていたか?

アメリカ1,012人の統計から

from Clinical infectious diseases : an official publication of the Infectious Diseases Society of America

2015/16年に子供のインフルエンザワクチンは効いていたか?の写真

インフルエンザウイルスは流行する型が毎年違い、ワクチンも流行予測をもとに作っているため、ワクチンの予防効果は年によって少しずつ違います。2015/16年シーズンの子供のデータから有効率が報告されました。

2歳から17歳でのインフルエンザワクチンの有効率

アメリカの研究班が、2015年末から2016年初のインフルエンザ流行について、2歳から17歳の子供でのインフルエンザワクチンの有効性を調べ、専門誌『Clinical Infectious Diseases』に報告しました。

アメリカ8か所の施設(フロリダ州、ミネソタ州、ノースカロライナ州、オハイオ州、オレゴン州、テネシー州、テキサス州、ウィスコンシン州)で、2015年11月30日から2016年4月15日までに発熱と呼吸器症状が出て5日未満で受診した2歳から17歳の子供のデータが記録されました。

研究班は、対象者の鼻から取った検体からインフルエンザウイルスの遺伝物質が見つかるかを調べ、ワクチンを打っていた子供と打っていなかった子供を比較して、有効率を計算しました。

 

生ワクチンで46%、不活化ワクチンで65%

対象となった1,012人の子供のデータを解析しました。ワクチンを打っていたかどうかで分けると次のようになりました。

  • 未接種:59%
  • 生ワクチン:10%
  • 3価不活化ワクチン:10%
  • 4価不活化ワクチン:20%
  • 不活化ワクチン(3価か4価か不明):1%

インフルエンザワクチンには種類があります。日本で主に使われているワクチンは4価不活化ワクチンです。2014/15年シーズンまでは3価不活化ワクチンが使われていました。

生ワクチンは日本では未承認です(2017年10月時点)。生ワクチンは針を刺さず鼻からスプレーすることで予防接種ができるとされています。

生ワクチンと不活化ワクチンに分けて有効率を計算すると次の結果が得られました。

すべてのインフルエンザに対して、ワクチン有効率は生ワクチンで46%(95%信頼区間7-69%)、不活化ワクチンで65%(95%信頼区間48-76%)だった。

生ワクチンの有効率は46%、不活化ワクチンの有効率は65%でした。不活化ワクチンのほうが有効率が高いように見えますが、統計的には偶然としても説明がつく範囲でした。いずれも未接種に比べるとインフルエンザが減っていることが確認できました。

 

2015/16年もワクチン有効

2015/16年のアメリカのインフルエンザ予防接種の結果を紹介しました。

同じ2015/16年のアメリカの別の統計によると、不活化ワクチンは有効だったが生ワクチンの効果は確認できなかったとする報告もあります。

関連記事:インフルエンザの「痛くないワクチン」は効かない?2015-16年の結果

2016/17年シーズンについては、アメリカ疾病管理予防センター(CDC)が生ワクチンを「使うべきではない」と明言しました。理由として、2013年から2016年までのデータで生ワクチンの効果が弱かったことが挙げられています

生ワクチンは日本では未承認のため、知らずに使ってしまうことはほとんどないと思われます。不活化ワクチンについては、例年有効率が報告され、効果が確認されています。

2017/18年の流行シーズンに向けて予防接種が各地で始まっています。全国的な流行が始まる前にワクチンを打っておくことで高い効果が期待できます。まだ打っていない方はぜひ検討してください。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

2015-2016 Vaccine Effectiveness of Live Attenuated and Inactivated Influenza Vaccines in Children in the United States.

Clin Infect Dis. 2017 Oct 4. [Epub ahead of print]

[PMID: 29029064]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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