2017.04.06 | ニュース

ビタミンCで心筋梗塞や脳卒中は予防できない?

文献の調査から

from The Cochrane database of systematic reviews

ビタミンCで心筋梗塞や脳卒中は予防できない?の写真

ビタミンCは体にいいと思いますか? ビタミンCの健康効果についてはたくさんの研究がありますが、何にでも効くわけではありません。心筋梗塞や脳卒中などの発生率に着目して、これまでの研究結果の調査が行われました。

文献を調査する方法で、ビタミンCを補充することにより心血管疾患を予防できるかについて、これまでに示されているデータをまとめた研究を紹介します。

心血管疾患とは動脈硬化など血管の変化が関係する病気の総称です。心筋梗塞や脳卒中が心血管疾患に含まれます。高血圧や糖尿病などがあると心血管疾患の危険性が増加します。

この研究は、健康な成人または心血管疾患の危険性が比較的高い成人を対象として、ビタミンCを補充することで、心血管疾患の症状など(イベント)が発生する数に違いがあるかを調べています。

過去の研究データベースから、当てはまる研究結果を収集して統合しました。

 

調査により、条件に合う研究は8件見つかりました。しかし、検査値ではなく目に見える症状などの発生数を報告したものは8件のうち1件だけでした。

得られたデータから、有効成分を含まない偽薬(プラセボ)とビタミンCを比べたとき、次の結果が得られました。

  • 主な心血管疾患イベントの発生率に差がない
  • 死亡率に差がない
  • 心筋梗塞の発生率に差がない
  • 脳卒中の発生率に差がない
  • 心血管疾患による死亡率に差がない
  • バイパス手術(CABG)またはカテーテル治療(PTCA)が行われた件数に差がない
  • 狭心痛の発生率に差がない

研究班は「現時点でビタミンC補充が心血管疾患のリスクを減らすという証拠は、健康な参加者についても心血管疾患のリスクが高い参加者についても、存在しない[...]」と結論しています。

 

ビタミンCを補充しても心血管疾患を予防できるとは言えないという報告を紹介しました。ビタミンCのサプリメントを飲もうと思うとき、心血管疾患の予防を目的と考えることは事実に合わないと言えます。

 

ビタミンCは極端に食事が偏る環境では不足する場合があります。重度のビタミンC不足は出血や歯肉炎などを起こす壊血病の原因になります。壊血病の原因がわかっていなかった時代には、長期間の航海のうちに壊血病で多くの死者が出ていました。

しかし、現代の先進国ではビタミンCの必要性が広く知られたうえ、多くの状況で十分なビタミンCを手に入れることができます。

 

必要な栄養素が足りているか心配なときは「日本食品標準成分表」や「日本人の食事摂取基準」が役に立つかもしれません。病気の予防になるかについては、このように広い範囲から情報を集めた結果が参考になります。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Vitamin C supplementation for the primary prevention of cardiovascular disease.

Cochrane Database Syst Rev. 2017 Mar 16. [Epub ahead of print]

[PMID: 28301692]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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