2017.03.17 | ニュース

透析によるホルモンバランスの異常、新薬パーサビブで改善

683人の治療で検証

from JAMA

透析によるホルモンバランスの異常、新薬パーサビブで改善の写真

透析を長期間続けていると、代謝異常が起こって骨からカルシウムが血液に出て行くとともに、副甲状腺ホルモンが異常に多くなります。治療薬によりホルモンの状態を改善する効果が検証されました。

慢性腎臓病などにより透析を長く続けている人で、腎性骨異栄養症と呼ばれる代謝異常が現れることがあります。腎性骨異栄養症では、腸からカルシウムを吸収しにくくなり、血液中のカルシウムが少なくなります。また、カルシウムを調節する作用のある副甲状腺ホルモンが異常に多く分泌されます。

副甲状腺ホルモンは骨からカルシウムを放出させる作用があります。副甲状腺ホルモンの分泌が多すぎる状態(副甲状腺機能亢進症)では、骨がもろくなり骨折しやすいなどの問題が現れます。副甲状腺機能亢進症のうち、ほかの病気などが原因で引き起こされているものを二次性副甲状腺機能亢進症と言います。腎性骨異栄養症は二次性副甲状腺機能亢進症が発生している状態です。

 

二次性副甲状腺機能亢進症の治療薬の効果を検証した研究を紹介します。

この研究では、新薬であるエテルカルセチド(商品名パーサビブ®)の静脈内投与と、既存薬のシナカルセトの飲み薬を比較して、副甲状腺ホルモンの量を減らす効果を調べています。

透析治療中で副甲状腺ホルモンが500pg/mlを超えている(基準値は40pg/ml程度)患者683人が対象となりました。

対象者はランダムに2グループに分けられ、それぞれ治療を受けました。

  • エテルカルセチドの静脈内投与と偽薬の飲み薬で治療するグループ
  • 偽薬の静脈内投与とシナカルセトの飲み薬で治療するグループ

2グループの比較について解説します。

シナカルセトも副甲状腺ホルモンを減らす薬です。エテルカルセチドはシナカルセトと同様に副甲状腺ホルモンを減らす効果を期待して試されましたが、用法に違いがあります。シナカルセトは飲み薬です。対してエテルカルセチドは注射液であり、透析でいったん体の外に出した血液を戻す回路の中に投与することができます。

比較する薬の性状が違うため、一方ずつの薬を使用する対象者の条件をなるべく同じにするため、全員が静脈内投与と飲み薬の両方を使用し、一方を偽薬とするように決められています(ダブルダミー研究)。

 

治療により次の結果が得られました。

PTH濃度の30%以上減少を達成した患者の割合の差の推定値は、シナカルセトを割付られた343人のうち198人(57.7%)と、エテルカルセチドを割付られた340人のうち232人(68.2%)の間で-10.5%(95%信頼区間-17.5%から-3.5%、非劣性についてP<0.001、優越性についてP=0.004)だった。

最も多く見られた有害事象は血中カルシウムの減少だった(68.9% vs 59.8%)。

副甲状腺ホルモンが目標とした30%減少を達成した患者の割合は、シナカルセトを使ったグループよりも、エテルカルセチドを使ったグループのほうが高くなりました

副作用の可能性があることとして、どちらのグループでも血中カルシウム濃度の減少が高頻度で現れました。

 

エテルカルセチドが透析により異常に増加した副甲状腺ホルモンを減らす効果が検証されました。

エテルカルセチドを有効成分とする製剤のパーサビブ®は、日本では2016年12月19日に承認されています。

腎性骨異栄養症は透析を続ける上で患者の負担を増やす要素です。エテルカルセチドを選択肢に加え、患者の状態に最適な方法で治療することが、しばしば長年に及ぶ透析治療中の生活をよりよくすることにつながるかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Effect of Etelcalcetide vs Cinacalcet on Serum Parathyroid Hormone in Patients Receiving Hemodialysis With Secondary Hyperparathyroidism: A Randomized Clinical Trial.

JAMA. 2017 Jan 10.

[PMID: 28097356]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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