2015.07.05 | ニュース

巨細胞性動脈炎の原因は水痘帯状疱疹ウイルスなのか?

アメリカ17人の抗体検査から

from The Journal of infectious diseases

巨細胞性動脈炎の原因は水痘帯状疱疹ウイルスなのか?の写真

巨細胞性動脈炎は、血管に炎症が起こり、痛みや発熱などの症状が出る病気です。こめかみの位置にある側頭動脈に炎症が現れやすく、眼につながる動脈が障害されて失明の原因になることもあります。原因は不明ですが、免疫の異常により自分自身の体が攻撃されてしまうこと(自己免疫)が関わっていると考えられています。アメリカの研究班が、水痘帯状疱疹ウイルスが巨細胞性動脈炎患者に高い割合で見つかったことを報告しました。

◆水痘帯状疱疹ウイルスを検索

研究班は、巨細胞性動脈炎の患者4人と、巨細胞性動脈炎のなかった13人の側頭動脈に、水痘帯状疱疹ウイルスが見つかるかどうかを調べました。

水痘帯状疱疹ウイルスは、水痘や帯状疱疹の原因になるウイルスで、症状を起こしていないときにも多くの人の体に感染しています。

 

◆抗体の結果が完全に一致

検査の結果、巨細胞性動脈炎があった4人全員に、水痘帯状疱疹ウイルスに対する抗体が見つかりました。対して、巨細胞性動脈炎がなかった13人には、水痘帯状疱疹ウイルスの抗体は誰からも見つかりませんでした。巨細胞性動脈炎があった人の一部からは、水痘帯状疱疹ウイルスのDNAも見つかりました。

抗体がある人は、現在または過去に水痘帯状疱疹ウイルスに感染したことがある可能性が大きく、DNAが見つかった人には、水痘帯状疱疹ウイルスの感染が続いている可能性が大きいと考えられます。

研究班は「水痘帯状疱疹ウイルスは巨細胞性動脈炎の原因になるかもしれない」と推定しています。

 

水痘帯状疱疹ウイルスと巨細胞性動脈炎の関係については、最近しばしば議論されています。ウイルス感染をきっかけに発症する自己免疫疾患として、ほかにも1型糖尿病などが知られています。この研究で示された関連は因果関係を強く示唆するものではなく、あくまで傍証にとどまりますが、この説は巨細胞性動脈炎が発症するしくみを明らかにする研究が進むうえで、何かの刺激になるかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Varicella Zoster Virus in Temporal Arteries of Patients With Giant Cell Arteritis.

J Infect Dis. 2015 Jul 15

 

[PMID: 26116729]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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