2015.05.18 | ニュース

HIVの治療、新薬ゲンボイヤ®配合錠で副作用少なく

テノホビルアラフェナミドで効果非劣性+副作用減

from Lancet

HIVの治療、新薬ゲンボイヤ®配合錠で副作用少なくの写真

エイズ (AIDS) を起こすHIV感染症の治療薬に、テノホビルジソプロキシルフマル酸塩 (TDF) というものがあります。有効な治療として使われていますが、副作用が問題になることもあります。副作用の少ない新薬が望まれるなか、テノホビルアラフェナミド (TAF) という、体内でTDFと似た働きをする薬剤が試され、TDFに劣らない効果を挙げつつ副作用は抑えられたことが報告されました。

◆従来治療のうちTDFをTAFに置き換える試験

研究チームは、TAFの効果と副作用を検証するために、通常TDFと同時に使われる薬との組み合わせのうちTDFだけをTAFに置き換えて、従来の治療と差が出るかどうかを調べました。

これら2件の、対照を取った、二重盲検法によるフェイズ3試験において、我々は16か国の178の外来医療機関から、HIVに感染した、治療を受けたことのない、推定クレアチニンクリアランス50mL/min以上の患者を採用した。

参加者は1日1回、[...]テノホビルアラフェナミドを含む経口錠 (E/C/F/TAF)または、[...]テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩を含む経口錠 (E/C/F/TDF) を、マッチングした偽薬とともに飲むようランダムに1:1に割り付けられた。

試験薬のどちらかを飲んだ参加者は、全員を効用と安全性に対する一次intention-to-treat分析の対象とした。

このように、参加者はランダムにE/C/F/TAFの治療を受けるグループとE/C/F/TDFの治療を受けるグループに振り分けられ、血中からHIVがいなくなる効果が出るかどうか、また副作用が現れるかどうかを調べられました。

 

【2016/8/17追記:

ここで使われているE/C/F/TAFの錠剤というのが、2016年7月から日本でも販売開始されたゲンボイヤ®配合錠(商品名)です。】

 

◆十分な効果あり、副作用は減少

治療の効果は次のようなものでした。

我々は2013年Ⅰ月22日から2013年11月4日までの間に参加者(2,175人がスクリーニングで発見され、1,744人がランダム割り付けを受けた)を採用し、1,733人に治療を(866人にはE/C/F/TAFを、867人にはE/C/F/TDFを)行った。

866人のE/C/F/TAFグループのうち800人(92%)、867人のE/C/F/TDFグループのうち784人(90%)で血漿中HIV-1 RNAが50 copy/mL未満になり(調整した差2.0%、95%信頼区間-0.7-4.7)、E/C/F/TDFに対してE/C/F/TAFの非劣性が示された。

このように、E/C/F/TAFの治療効果はE/C/F/TDFに劣っていませんでした。

また、副作用についての比較では、TDFの副作用として知られていた腎機能低下(クレアチニン上昇)、蛋白尿、脊椎(背骨)と大腿骨の骨密度低下が、いずれもE/C/F/TAFのグループでE/C/F/TDFのグループよりも軽くまたは少なくなっていました。

 

E/C/F/TAFは日本でも承認申請準備中です。この研究では確かめられていない長期的な影響も含めて、HIV感染症に対してより良い薬が出てくるのかどうか、この先に期待がかかります。

 

【2016/8/17追記:

ゲンボイヤ®配合錠は日本で2016年6月17日に承認され、7月に販売開始となっています。】

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Tenofovir alafenamide versus tenofovir disoproxil fumarate, coformulated with elvitegravir, cobicistat, and emtricitabine, for initial treatment of HIV-1 infection: two randomised, double-blind, phase 3, non-inferiority trials.

Lancet. 2015 Apr 15

[PMID: 25890673]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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