しきゅうないまくぞうしょくしょう
子宮内膜増殖症
子宮の内側を覆う内膜が必要以上に増え、異常に厚くなってしまう状態。このうち一部は子宮体がんへ進行するため検査が必要
11人の医師がチェック 147回の改訂 最終更新: 2022.02.03

子宮内膜増殖症の基礎知識

POINT 子宮内膜増殖症とは

子宮の内膜が過剰に増殖し厚くなることで、40歳代の人に多く見られます。症状には不正性器出血や過多月経などがあり、不妊症の原因になることもあります。経腟超音波検査や子宮内膜の細胞を調べる検査(細胞診、組織診)を行い診断します。子宮内膜増殖症は、①単純型と複雑型、②異型の有無の組み合わせにより4つに分類されます。異型のない子宮内膜増殖症は自然に良くなることが多いので経過観察をされますが、不正性器出血や過多月経が見られる場合には、ホルモン剤による治療が行われます。異型のある子宮内膜増殖症では、子宮内膜がん(子宮体がん)に進展するリスクが異型のない場合と比べて高いので、基本的には子宮全摘術を行います。手術を希望されない場合には、高用量黄体ホルモン療法(MPA療法)が行われることもあります。不正性器出血や過多月経の症状がある場合には、産婦人科で早めに相談することをおすすめします。

子宮内膜増殖症について

  • 子宮の内側を覆う内膜が必要以上に増え、異常に厚くなってしまう状態
    • 女性ホルモンエストロゲン)の作用過剰が原因として考えられる
    • 子宮内膜増殖症は細胞1つ1つの形が崩れているかどうかでまず2つに分類される(細胞異型)
    • さらに細胞がどのように連なっているか、全体の形が崩れているかで、それぞれが2つに分けられる(構造異型)
      • 単純型子宮内膜増殖症(細胞に異型なし、構造も異常なし)
      • 複雑型子宮内膜増殖症(細胞に異型なし、構造に異型あり)
      • 単純型子宮内膜異型増殖症(細胞に異型あり、構造に異常なし)
      • 複雑型子宮内膜異型増殖症(細胞に異型あり、構造に異型あり)
  • 異型のない単純型子宮内膜増殖症は60%以上が自然に治る
  • 子宮内膜増殖症は「子宮体がん子宮内膜がん)」の一歩手前の状態として扱われる
    • 増殖した細胞にがんになりそうな細胞(異型細胞)がある場合は子宮内膜異型増殖症と呼ばれ注意する必要がある
    • 子宮内膜異型増殖症の場合、20-30%程度ががんに進行すると言われており、子宮内膜増殖症が見つかったときに、すでにがんと合併している場合も多い
  • 月経不順や無月経の女性、40-50歳代の女性に起こりやすい
  • 子宮内膜増殖症があっても妊娠できる
    • 妊娠したときは正常に出産できる
    • 子宮を取り除く手術をすると妊娠できなくなるが、妊娠を希望する場合はMPA療法と呼ばれる高用量黄体ホルモン療法もある

子宮内膜増殖症の症状

  • 主な症状は性器からの不正出血
  • その他の症状
    • 月経での出血量が多い
    • 強い貧血
    • だるさ
    • 動悸
  • これらの症状だけでは他の病気と区別がつかないため、検査が必要

子宮内膜増殖症の検査・診断

  • 大きく分けて、次のステップにしたがって検査を進める
    • 子宮内膜増殖症かどうかの診断
    • 子宮内膜増殖症だった場合、単なる増殖症か、異型増殖症かの診断
    • 異型増殖症だった場合、異型増殖症だけか、それとも子宮体がんに進んでいるのか
  • 経腟超音波検査子宮内膜の厚さを調べる
    • 最初の診断のために最も重要な検査
    • 閉経後の女性で5mm以上、閉経前の女性では20mm以上であることを1つの目安とする場合があるが、それ以下でもがんが見つかることもある
  • 子宮内膜が厚いことが確認された場合
    • 組織診:内膜の異型細胞(がん化する前の段階の細胞)の有無を調べる
      • この検査で、子宮内膜の増殖症なのか異型増殖症なのかを判断する
  • 子宮内膜異型増殖症やそれ以上の悪性病変が疑われた場合
    • 内膜全面掻爬:子宮内膜組織をかきとって行なう病理組織検査(麻酔がかかった状態で行う)
      • この検査で、子宮体がんになっていないかどうかを調べる

子宮内膜増殖症の治療法

  • 以下のことなどを考慮しつつ治療法が決まる
    • 患者の年齢
    • 組織型
    • 細胞異型度
    • 妊娠・出産の希望の有無
  • 異型のない子宮内膜増殖症の場合
    • がん化率が低く、通常6割以上が自然に治るため、基本的には経過を見る
    • 定期的に婦人科へ通い、内膜細胞診を行う
    • 若年者の無月経が原因と考えられる場合は、エストロゲン・プロゲスチンの配合剤が治療に使われる
    • 周期的黄体ホルモン(プロゲステロン)療法
      • プロゲステロンという別の女性ホルモンを投与して、エストロゲンの量を抑える
    • 偽閉経療法
      • 薬(GnRHアゴニスト、GnRHアンタゴニスト)を使って、閉経時のホルモン分泌状態を作り出すことによって、症状の緩和をはかる
  • 子宮内膜異型増殖症の場合
    • 自然治癒は期待しにくい
    • 妊娠希望がない場合は子宮全摘出術(子宮を取り除く手術)を行う
    • 将来的な妊娠を強く希望する場合の治療として、高用量の黄体ホルモン療法(MPA療法)がある

子宮内膜増殖症のタグ

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