かんせんせいしんないまくえん
感染性心内膜炎
心臓の中で細菌が感染を起こす病気。心臓内に出来た感染性の塊(疣贅)の破片が血流に乗って飛んでいくことで脳梗塞や心臓以外の部位の感染症を引き起こすことがある
8人の医師がチェック 101回の改訂 最終更新: 2022.03.22

感染性心内膜炎の基礎知識

POINT 感染性心内膜炎とは

心臓の内側で細菌感染が起こった状態で、心臓の中に菌の塊(疣贅:ゆうぜい)が作られてしまうことも多いです。虫歯のある人や心臓弁膜症のある人に起こりやすいことがわかっています。主な症状は発熱・倦怠感・関節痛・筋肉痛などです。心臓にある疣贅が脳に飛ぶと脳梗塞を起こし、心臓の冠動脈に飛ぶと心筋梗塞を起こします。 検査は血液検査・細菌検査(血液培養)・心臓エコー検査を行って診断をつけます。治療は適切な抗菌薬を用いて行いますが、心臓の弁が破壊されるなど心臓に重大な後遺症が残った場合は手術を行うことがあります。感染性心内膜炎が心配な人や治療したい人は、循環器内科・心臓血管外科・感染症内科を受診して下さい。

感染性心内膜炎について

  • 心臓の中で細菌が感染している状態
    • 心臓内にかたまり(疣贅;ゆうぜい)を作り、その破片が全身に流れて脳梗塞や心臓以外の部位で感染症を引き起こすことがある
  • 主な原因
    • 歯科治療やカテーテル処置などが、細菌感染の原因となる
    • 生まれつき何らかの心臓の病気を抱えている人にも起こりやすい
  • 感染性心内膜炎によって引き起こされる病気がある
  • 人口10万人あたり10-50人の頻度で発症する

感染性心内膜炎の症状

  • 全身症状
    • 発熱
    • 関節痛
    • 筋肉痛
  • 塞栓症状:疣贅が流れていくことで生じる症状
    • 眼瞼結膜、頬部粘膜、四肢の皮膚に生じる点状出血
    • 脳梗塞による半身麻痺構音障害

感染性心内膜炎の検査・診断

  • 血液検査
    • 感染による炎症の程度を調べる
    • 他の臓器に異常がないかを調べる
  • 細菌検査
    • 血液中から細菌が検出されないかを調べる
    • 体内にデバイス(医療器具)がある場合には、可能な限りそこに細菌の付着がないかを調べる
  • 心臓超音波検査弁膜症や疣贅の有無を調べる 
    • 経胸壁超音波検査エコー検査)
      • もっとも簡便に行える超音波検査である
      • 肋骨の存在が見えにくくすることによって診断の精度が低下する
    • 経食道超音波検査(エコー検査)
      • 胃カメラのように口から入れる超音波検査機械を使って、食道から心臓の状態を調べる
      • 通常の心臓超音波検査のみでは不十分な場合が多く、経食道心臓超音波検査によって診断率が大きく上昇する

感染性心内膜炎の治療法

  • 抗菌薬
    • 通常の感染症よりも長期に渡り使用する必要がある(中断すると再発しやすい)
    • 合併症がない場合や血管内異物がないでも最低2週間投与することがスタンダートとなっている
    • 病原体に応じて投与する抗菌薬の種類が変わる(以下は例)
      • MSSA(メチシリン感受性ブドウ球菌):セファゾリン
      • MRSA(メチシリン耐性ブドウ球菌):バンコマイシン、ダプトマイシン、リネゾリド
      • レンサ球菌:アンピシリン、セフトリアキソン
      • 結核菌:抗結核
  • 手術
    • うっ血性心不全、抵抗性感染、感染性塞栓症のリスクが高い場合に行われる
    • 塞栓が繰り返される場合や疣贅が大きい(10mm)場合も手術が考慮される
    • 抗菌薬のみで治療ができない場合、放置すると心臓の構造(特に弁)が破壊されていくため、手術が必要となる
  • 予防法、再発予防法
    • 人工弁置換術後や先天性心疾患、心内膜炎の既往がある人の場合には、さまざまな外科的処置(抜歯を含む)を行う際にあらかじめ抗菌薬を内服する

感染性心内膜炎のタグ

感染性心内膜炎に関わるからだの部位